ドラゴンクエスト3(HD-2Dリメイク)プレイ記録

感想まとめ

 総評、偉大なバランスの作品をリメイクしたがゆえに生まれたちぐはぐな輝き。

 かつてドラクエ3が国内ファンタジーに「神授の戦闘職としての勇者」という存在をもたらしてから35年間、長きにわたって回され続けた物語のメタは数知れず。それに対して2024年の立場としてオルテガ・母親・サイモンらを通して描かれた「勇者の狂気と悲哀」は良いリメイクアレンジであったなと思います。特に母親の熱演は本当に素晴らしいもので、結末も知ってしまっているからこそ「この人を悲しませたくないな」なんて心を痛めつつプレイを進める体験をさせてもらいました。

 ドラクエ3はあくまでも昭和の作品であり、SFC/GB移植版であっても大きくプレイフィールを変えたものではないため、2024年水準で遊びやすい・わかりやすいゲームであるかというと怪しいところはあります。そこでHD-2Dのビジュアルの強化と並行して遊びやすさ・わかりやすさを模索して様々な部分に手を加えたというのが本作の位置づけになるかと思います。ピクセルリマスターと近い発想ではありますが、積極的にバランスに手を加えようという点では大きく異なります。

 しかしその手を入れた箇所がことごとく、調整意図が理解できる一方で、原作のバランスを崩してしまう要素ともなってしまっており、結果として(原作をプレイしているかどうかに関わらず)賛否両論やむなしという程度になってしまっているというのが個人的な評価になりました。

  • 原作では効率のよい戦闘を心がけHPMPを消耗しきらないうちに目的地への到達を目指すリソース管理ゲームの要素があったが、これはプレイヤーへの負荷が大きく現代的でない
     ○ ルーラとリレミトの消費MPをゼロにする、レベルアップによる回復を追加することでレベル不足時の継続戦闘期間を延ばす、アイテムやゴールドを大量に手に入るようにする。これらで負荷を減らし手軽に触れられるようにした
     × 道中でも全力を出し続けられるためそれを前提とした調整をしないと退屈なものとなり、複数回行動・多モンスター編成・状態異常頼り・低すばやさの極端な性能の敵パーティと戦うゲームとなった。ダンジョンに抑揚がなくなるため追加ボスが必要となった。燃費の良さに寄与していた通常攻撃・回復呪文寄りの職業の意義が損なわれた
  • 勇者にキャラクター性があまりなく、パーティメンバーはキャラメイクであるためキャラクター間の関係性や因縁といったストーリー面の推進力が弱く、案内やドラマ性に欠ける
     ○ 原作を尊重してキャラクターに台詞を付けたりイベントを付けたりすることはしなかったが、精霊・オルテガ・母親・サイモン・ドワーフ・ルイーダあたりのイベントを積極的に差し込み、わかりやすく盛り上がることのできるストーリーラインを構築した
     × 全区間において次の行動が常に示され続けることになったほか、行く先行く先すべてでオルテガの後追いしかしていないように感じられることになってしまい、体感的な自由度が下がってしまった
  • SFC/GB版ではネガティブワードの性格は純粋に難易度が高くなるなど事前知識ゲームの要素が大きく、プレイヤーの選択によってゲーム体験の難易度部分が変わりすぎていた
     ○ 計算式の大幅改定を行い、運の良さをメインとした遊び人の運用がしやすくなったほか、性格によって極端な性能差がなくなった(1.4倍の力が成長しても0.7倍しか運の良さが成長しない場合、旧来ほど大幅な火力差は出ないらしい)
     × 予め決められている標準的なステータスに沿うかどうかで単純にプレイ難度が変わるため、よほどレベル過剰なペースで進まない限りは呪文・固定値寄りの特技以外はどこかの段階(プレイスタイルによるが、海・サマンオサ・アレフガルド・クリア後の防御力が一気に上がるどこかの段階のいずれか)で火力不足と状態異常発生率の大幅な増加に陥る
  • 見降ろし型のドット画面であったため、現代基準だとビジュアル面の強化の余地があった
     ○ 各地の文化圏や気候による素材や建築様式の違いを細かく描写されており、全世界を旅しているドラクエ3の観光的な体験がより一層際立つものになった。いくつか存在する塔や城のらせん階段などが美しくなった
     × 壁や奥行きの表現のためカメラのチルト角を下げたものの、マップの構造がほとんどそのままのため手前側へ向かう・壁付近を探索する際の快適性が下がった。ラーミアに至っては通常高度だと真下の点が画面外に見えなくなったため着地マーカーが北にある奇妙なことになってしまっている。そのうえメダル系の仕様が続投、はぐれモンスターで増加傾向なのでそれが不快感にあたりやすくなっている

 主だった面は以上4点でしょうか。それぞれの調整意図はわかりますしそれによって快適・楽しく・わかりやすくなった面もあるのですが、ドラクエ3というゲームの全体像をどうしても維持しなくてはならなかったこととぶち当たってしまっており、結果として不幸な生まれになってしまったな……というのが個人的な所感になります。ゆえにとても言及しづらい作品になってしまったと言えよう。

 ゲーム全体としては楽しませてもらいましたし、ドラクエ3を今までやってないならやってみてもいいんじゃないかなくらいの評価といったところでしょうか。ただ、追加中ボスはいずれも不快にさせるタイプのボスなので「SFC/GB基準のやつもプレイできるからどっちがいいか」と聞かれたら前のやつを薦めてしまうかな……みたいなところはあります。まもの呼びだけで戦い続けるなら難易度はなくなりますがそうしてほしいか・そうするためにはぐれモンスターをひたすら探してほしいかというとそうでもありませんし。

 なお、プレイ記録通り、隠しダンジョン2については見限ったのでそちらのバランスの話はしません。

各職所感

・勇者
ロトの剣を運命づけられているにも関わらず、計算式によってブーメランとギガデイン砲台とベホマズン砲台を運命づけられた者。入手した種を吟味なしで投与するくらいでたぶんちょうどいい。アレフガルド以降はもう初手常にギガデインくらいのつもりでいいと思います。というかそれ以外が微妙。

・戦士
元々突き詰めると不遇ではありましたが今回さらに逆風が吹いている悲しみ。通常攻撃と高HPと防御力によって成り立つ継続戦闘能力はあまり輝くところがなく、ムチ・ブーメランはあまり装備できず、1ターン目に間に合わない素早さなので活躍はかなり厳しめ。さみだれけんはストーリー的には習得が遅すぎる(43)。

・武闘家
概ね戦士と近い評価だが、かつての最終職候補からそこそこの位置へのランクダウンという感じ。上の世界はブーメラン全盛期なのでおうごんのつめはあんまり意味はないし、まわし蹴り(34)まではちょっと厳しいか。今回ブレス攻撃・呪文攻撃を連射される局面が多いため、耐性面の貧弱さがより問題になりやすいところはあるように思う。

・魔法使い
未使用なのでわからないものの、たぶん今作比較的利便性が高い職。属性耐性と残HPを判断できるオート戦闘でひたすら範囲呪文を撃ってもらうだけでだいぶ活躍できたと思います。

・僧侶
未使用なのでわからないものの、たぶん今作一番の不遇職。ダーマ神殿以前で僧侶の回復力が求められる場面はほとんどないため、ピラミッドが一番の活躍どころか。ただベホマラー未習得の時期なので、まもの使いのほうがヒーラーとしてもマシという疑いも…

・商人
戦闘面では戦士劣化とされてきましたが、石つぶて(5)が時期からすると強かったらしい。専用装備であった前掛けをまもの使いに取られてしまいましたが、元々そんなに強い装備というわけでもないのでそこはあまり変動点ではない感じ。

・遊び人
旧作より比較的遊ばなくなってる遊び人。ただLv20前後であそびに自己麻痺などが入ってきて面倒くさくなるので、ストーリー中に連れていた場合はダーマ即転職でよいと思います。ハッスルダンスは習得が遅すぎる(38)。

・賢者
依然優秀な安定職。単体攻撃では今回なぜか滅茶苦茶数字が高いりりょくの杖がバハラタからゾーマ城までずっとぶん回していられるのと、魔法使いの呪文運用がそのままできるので迷ったら賢者増やしておけばOKという印象。1名でもいいしそれ以上でも良い。

・盗賊
SFC時代の優遇職。とにかく盗む確率が高いように思う。居るだけでやたらに種が手に入るのと、隠し系アイテムがレミラーマほぼ必須なのも含めて「嫌いでもとうぞくのはな(13)・レミラーマ(20)・らせん打ち(25)だけ覚えとけ」という感じ。素早くムチ・ブーメランを装備可能なので上の世界なら火力的にも上のほう。以降連れる場合はいかずちの杖などアイテム使用係を検討してもよいと思う。

・まもの使い
HD-2D時代の優遇職。はぐれモンスターを回収できているなら、まもの呼びだけしてればすべてが終わる。多少取り逃していても全然大丈夫。職性能的には戦士に近い傾向のステータスになり後攻になりがちな弱点があるため、特技を覚えたら盗賊・武闘家・賢者のいずれかになっておくのがたぶん一番楽。ただそのままでもムチ・ブーメラン装備可能なため戦士よりよっぽど動きがよかったりする疑いがある。なお、オート戦闘でビーストモードは使わない(ので今回のプレイではストーリー中に一回も使ってない)