所得税さんのお話

はじめに

 今年も確定申告の時期がやってきました。毎年話題になるたびにちょいちょい勉強しなおして話題を上げるのですが、せっかくなので覚書の形にしておこうかなと思ってこのエントリを書いておきます。きっと何かの役に立つから。

注意:本稿は税務について代行・事務・相談といった業を企図したものでなく、個人の理解を覚書として公開しているものです。解釈や言い換えを多く含み、正確なものではありません。詳しくは国税庁・各自治体のウェブサイトほか、税務署、税理士にご相談ください。

所得税と住民税

 そもそも所得税と住民税は何かといいますと、個人が稼いだ金額に対して掛けられる税金です。稼いだ金額から決まった割合の税金を納めることになっており、仕組みとしては一年に稼いだ実績をもとに一年分の税金の額が決まるようになっています。

 所得税は国税(国)、住民税は地方税(都道府県・市区町村)で収める先と計算式が異なりますが、大まかな意味合いとしては同じものです。

収入と所得

 まず所得税の話をするときに出てくるワードが「収入」「所得」です。まずここを整理しておきます。

【収入】
 その個人がいくら稼いだかのことで、単位は円です。一年間であればいわゆる年収にあたりますが、実際に手にした金額とは限りません。以下の10種類に分類されます。

・利子収入 … 預貯金の利子などで稼いだお金。
・配当収入 … 株式や投資信託の配当などで稼いだお金。
・不動産収入 … 持っている土地や建物を貸したことなどで稼いだお金。
・事業収入 … その個人事業として働いて得たお金や物品など。
・給与収入 … 勤務先から給与として得たお金や物品など。源泉徴収や各種保険料が天引きされている場合はそれを含む額で、手取りではない
・退職収入 … 退職金などで稼いだお金。
・山林収入 … 山林の伐採などで稼いだお金。
・譲渡収入 … 土地を売却するなどして稼いだお金。
・一時収入 … 懸賞や生命保険の満期など、上記8つのいずれの項目にも当てはまらないが一時的なものと認められるお金。
・雑収入 … 年金や副業など、上記8つのいずれの項目にも当てはまらないが労務や譲渡の性質を持っていると認められるお金。

【所得】
 その個人が稼いだ収入のうち、税金をかけても妥当であろうと考えられる額のことです。これも単位は円ですが、国が見積もったあなたの経済的戦闘力と考えるとちょうどいいと思います。単位もパワーでいいよ。上記10種類の収入から、それぞれのルールに従い、10種類の所得を計算することになります。

・利子所得 … 利子収入そのまま。
・配当所得 … 配当収入から、配当を得るため借りたお金の利子などを引いたもの。
・不動産所得 … 不動産収入から、固定資産税として払った額などを引いたもの。
・事業所得 … 事業収入から、仕入原価など経費を引いたもの。また控除額もある。
・給与所得 … 給与収入から、条件の当てはまる控除額を引いたもの。
・退職所得 … 退職収入から、条件の当てはまる控除額を引いたもの。
・山林所得 … 山林収入から、植林費などを引いたもの。また控除額もある。
・譲渡所得 … 譲渡収入そのまま。
・一時所得 … 一時収入から、得るための経費など引いたもの。また控除額もある。
・雑所得 … 雑収入から、経費を引いたもの。

※控除額:何か差し引きのお金があったわけではないけれど、理由があると認められて引き算してもいいことが定められた額。例えば給与の「勤労学生控除」とか。

 さまざまに書いてありますが、要するに給与所得と退職所得は「収入から税金をかけるに相応しくない理由分を引いたもの」、それ以外の所得は「収入から経費を引いたもの」と考えればだいたいあっているかと思います。

源泉徴収と年末調整と確定申告

 収入と所得の計算はなんとなく説明したところで、ややこしいイベントの3連続に取り掛かります。

【源泉徴収】
 会社などから給与や報酬が渡される際、その全額(源泉)から所得税と住民税にあたる額を引いて(徴収して)渡すやり方のことです。収入としては徴収したぶんも含めて収入となりますので、これや保険料の額が額面年収と手取りの差になります。

 徴収したぶんは会社などからそのまま納税されるので、受け取る側からすれば税金を納める手間がいらないし、国や自治体側からすると納税漏れが起こりにくくなるという仕組みになっています。

 ただし源泉徴収にはひとつ気を付けなければならないことがあり、それは所得税は「一年に稼いだ実績をもとに一年分の税金の額が決まる」ことです。ところが給与や報酬は毎月や契約の都度渡されるわけですから、渡された時点では税金の額は決まっていないことになります。決まっていない額なのにどうやって源泉徴収するのかというと、だいたいの額を引いてごまかしています。そしてその額は一般に本来の額より高いです。

 さて、引かれ過ぎた税金はどうするのか、そこでよく出てくるのが年末調整です。

【年末調整】
 年末(12月)の給与が決まると、おのずと一年間の給与収入の総額が定まります。これと控除額がわかれば給与所得も定まりますので、正しい所得税額も計算できるようになるはずです。このようにして得られた正しい所得税額に合わせて12月給料の源泉徴収額を調整し、納税額の帳尻を合わせてしまうこと。これが年末調整です。
※年末調整の際に保険料などの証明書類を求められるのは、控除額を明らかにするために必要だからです。

 年末調整をすることによって、多くのサラリーマンは税金を払いすぎてしまうことなく、かといって納税作業を自分でする必要もなく、何も考えず暮らしていくことができるようになっているというわけです。めでたしめでたし。

 ……で終わればよいのですが、年末調整で調整しきれるのは1か所からの給与についてのみです。所得税の額は先に示した10種類の所得から計算されますので給与所得以外があれば数字がずれてしまいますし、給与元が2か所以上ですと源泉徴収もそれぞれ行われていますので調整しきれなくなります。こういった場合になると、ついに確定申告へと進むことになります。

 ですが、年末調整で正しい税額に調整できていなくても、確定申告を免除される場合もあります。例えばこんな場合です。
    年末調整している
 かつ 給与収入が2000万円を超えない
 かつ 給与所得と退職所得以外の所得の合計が20万円を超えない
 かつ 給与が1か所からのみ支払われている
要するに「ちょっとしたずれはあるけどほぼ正しい納税額になっていて、わざわざそのために確定申告を処理するほうがもったいない」という場合ですね。このような場合、正しい納税額ではないですが正しく申告しなおすことを免除されるという例があります。こういったときはありがたく免除されておきましょう。

【確定申告】
 税務署に対して10種類の所得がどのくらいであるか、各種証明書類をすべてそろえて提出することで証明、確定させた所得税額を申告すること。それが確定申告です。ここにたどり着いたときは頑張りましょう。

 なお、先ほどの「確定申告を免除される場合」に該当していながら別の理由で確定申告をすることになった場合、すべての所得を申告しなければなりませんので注意が必要です。状況によっては控除目当てで申告したのにかえって税額が増えるという悲しいこともあります。

例:
副業でイラストを描いて19万円稼いだ。経費4万の証明ができるので雑所得は15万円。
本業で年末調整していて、それ以外の所得はないので確定申告する必要はないみたい。
ただ、病気をして年間医療費が持ち出し20万円もあった。この額なら医療費控除で所得が10万円も控除されると聞いたので確定申告をしようと思った。
 → 確定申告では雑所得も含めないとならないので、雑所得15万足して、医療費控除で10万引いても…

所得は住民税へ

 ここまでで所得税の納税が無事に終わりましたが、次に住民税が続きます。といっても住民税もここまでで使った「所得」の額から税額が計算されますので、これ以上の項目は出てきません。なおここまで触れませんでしたが、所得税は「1年の所得でその年の税額が決まる」ので年末調整のような仕組みがありますが、住民税は「1年の所得で翌年の税額が決まる」ので払う額が最初から決まっているという違いがあります。

 先ほどまでの流れによって国による所得の把握が完了すると、実は国から各自治体に所得額が通知されるようになっています。各自治体ではそれをもとにして住民税を計算しますので、基本的に住民税について何か書類を出したりする必要はなく、自然と翌年に正しい税額が源泉徴収されたり請求されたりします。

 ……のはずだったのですが、世の中にはやっぱり例外というものがいくつもあり、先ほどの「確定申告を免除される場合」がちょうど例外になっています。

 先ほどの「確定申告を免除される場合」ですが、許されているのはあくまで確定申告をしないで厳密には正しくない所得のまま所得税を支払うことであり、正しい所得を求めようとするならば給与所得と退職所得以外の所得も考慮して計算する必要があります。つまり国から各自治体に通知される所得額が国税では許されたけど厳密には正しくない所得額になっており、住民税としては許されていません。平たく言ってしまえば、そのままだと脱税になってしまいます。

 こういう場合には、各自治体の住民税担当に問い合わせをかけ、住民税申告で正しい所得の値を申請しましょう。住民税申告の書類を提出することになりますが、内容は確定申告とだいたい同じになります。申告するともちろんながら住民税は上がりますが、それは……払っておきましょうね! という。

その他

 あと何か思い出したり学びになるようなことがあったら書き足していくかもしれません。本職の方はもしいらっしゃったらお手柔らかにお願いします……